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■特集■

「イナカナかれっじ」完結記念
 法田恵先生インタビュー 第1部

4年以上の長きに渡り多くの支持を得てきた連載「イナカナかれっじ」が、メンズヤング2005年9月号にて最終回を迎え、単行本の最終巻も発売されました。そこでWebメンズヤングでは、特別企画として法田恵先生のインタビューを掲載します。
イナカナかれっじはいかにして生まれたのか!?


Text by 編集部(庭)

法田恵
(ほったけい)
ほのぼのとした作風で多くの支持を集める。メンズヤング11月号では読み切り作品を掲載予定。


なぜ“イナカ”だったのか


1巻だけは手塗りのカラーイラスト。2巻目以降はCG塗りに

編集 長い間の連載お疲れ様でした。

法田 いやいや、こちらこそありがとうございます。

編集 連載が始まったのは2001年の春からでした。

法田 初めてメンズヤングから声をかけられたのが…。

編集 1999年の夏コミ(※1)でしたね。

法田 あの頃はまだ他の雑誌で仕事をしていて手が一杯だからって一度断りましたよね。

編集 あの頃描かれていたのは?

法田 キングダム(※2)で「こんすとらくたーず」を描き始めた頃ですか。あとボナンザ(※3)で「OLウェイズ」を描いていた頃です。その後、ボナンザで「サカマチ夢譚」を連載していたら…。

編集 ボナンザが休刊したと。

法田 という感じで、メンズヤングで描くことになりました。

編集 編集部からは「学園モノで」というリクエストを出したと思います。そうしたら田舎の大学が舞台になったわけですが、この設定にはどんな意図があったのでしょう?

法田 ただ学園モノといっても、単に東京とか大都市を舞台にするのも普通かなと思いまして、ちょっと変わった事をしたかったんですね。私自身が田舎出身ということもありましたし。その辺のリアリティを出せればなあと。

編集 舞台のモデルになったのは…。

法田 まあ、終わったから言っちゃいますと上田ですね。あの辺りは何度か行った事がありまして親近感もありました。私は鉄道が好きなんですが、あそこにはローカルな私鉄も残ってまして、そんな雰囲気もいいなあと。温泉もあったり、特徴のある場所ですよね。それで舞台として面白いかなあ思ったんです。

編集 確か連載を始める前の打ち合わせで、方言がどうとかいう話が出た記憶があるんですが。

法田 ああ、そうです、そうです。あれは秋葉原だったかなあ。道を歩いてたら、近くの女の子が京都あたりの言葉でしゃべっていたんです。それを聞いた時、「ああ、田舎でもいいなあ」と思ったんですよね。大学生活って言うと普通東京を連想しちゃうけど、“上京”じゃなくてもいいんだよなって。漠然としたリアリティを感じたんですね。

編集 田舎の大学生は遊ぶところが少ないから。

法田 うーん、それは誤解なのかもしれないけど(笑)

編集 でも、地方は学生結婚も多いって言いますよ。

法田 そういうロマンみたいなものはありますよね。東京にはない。誤解かもしれないけど、そこに基づいたファンタジーみたいな。そんなイメージですかねえ。


3人は皆勤賞


のっけから引きこもる主人公…

編集 次に登場人物についてお聞きします。主人公の和樹はいきなり引きこもってました。あの頃は「引きこもり」がキーワード化した時期だったかもしれませんね。

法田 まあ、和樹の引きこもりは大したもんじゃないけど(笑) 1話目で外に出てくる訳ですから。

編集 屈折という程ではないけれど、イジけキャラですね。

法田 連載の開始時期のせいもあったんですね。ちょうど入学シーズン後に連載開始だったので、既に始まった学生生活に遅れて入っていく設定からああなってしまったような気がします。

編集 みづきは…。

法田 一言で言うと学級委員長のイメージです。そのままですね。

編集 花一輪というか…。

法田 いや、そこまでは言わないですけどね。和樹とは対照的にしています。和樹は全く希望通りの進学先じゃなかったのに、みづきは希望通りだったりとか。

編集 二人とも成績は良いという設定でしたが、そこは同じイメージですか。

法田 みづきはともかく、和樹はそういうシーンをあまり描けませんでしたけどね。

編集 カリンはどうですか。

法田 まあ、年上好きなんです。

編集 法田さんが?

法田 ええ、もうそんな年じゃないけど(笑) キャラとして年上キャラ、甘えられるタイプを作っておくといいかなと思いました。

編集 エロマンガ的には便利な存在ですよね。

法田 「教えてあげる…」とかね。あとはみづきとの対比。彼女は子供っぽいキャラにしましたから。まあ、カリンは動かしやすいキャラでした。

編集 この3人が主要登場人物でしたね。

法田 ええ、最初から皆勤賞です。

編集 全話出てますか。

法田 そのはずです。そのつもりで描いてましたから。確か1回くらいカリンが出そうにない回があったんですけど、「あ、このままじゃマズイな」とか思って。最後の方で無理矢理出したくらいです。

編集 そんな意図があったとは気づかずにすいませんでした(笑) 他に脇役で気に入っているキャラなどは。

法田 佐倉井と茜なんかは最初から最後まで特別波乱もないカップルとして、それっぽく描けたかなと思ってます。ああいう、ダラダラと姉弟感覚で付き合うカップルって実際にもいるんじゃないかなと思ってましたし。

編集 杉原も最初から登場していましたが。

法田 杉原はちょっと描き切れなかったですね。なんで和樹を追いかけ続けてるのかとか。実際は和樹以外の男とも付き合ってたわけですが。田舎に行ってしまったから、逃げていったから追うとかそういうのは上手く描けなかったなあと感じてます。


カリンさんには出生の秘密!?


なんとカリンにはハーフの裏設定が…

編集 杉原のことも含めて、入れ損ねたエピソードのようなものはありますか。

法田 大学で講義を受けたり研究したりとか、そういうのはほとんど描けませんでしたね。

編集 遊びの部分などはかなり描かれましたが。

法田 そっちばかりになってしまいましたよね。まあ、それはしょうがないかなと思いますが。他には、学校へ行くために欠かせないローカル私鉄に廃止話が持ち上がるとか…。

編集 それはマニアックな展開ですね。

法田 あと大学の経営が悪化して学校が潰れかけるとか。

編集 それは面白そうです。

法田 20年くらい前に「ひがみちゃんJam」(※4)というマンガがありましてね。そのマンガで最終回直前に主人公達のいた地方の大学が倒産するというエピソードがありまして、そういうのを覚えていたから面白そうだなとは思っていたんです。タイムリーなネタじゃないですか、大学の倒産って。あと、留学生なんかも出したかったですね。

編集 金髪の留学生とか。

法田 ただ、カリンが見た目的にもハーフっぽく描いてましたから、ちょっとカブっちゃうかなと思ってましたけども。カリンの出生の秘密とかも描きたかったかな。

編集 カリンに出生の秘密が!

法田 カリンはああやって親戚の家の管理を任されていた訳ですが、そもそも出身地も明かされなかったですしね。親元から通ってるわけでもなく、なぜ一人暮らししているのかとか。実はちょっと含みを持たせていたつもりだったんですが…。

編集 ずっと担当してたのにそんな裏設定があるとは全く知りませんしたよ。最初からそのつもりだったんですか?

法田 まあ、ハーフとかクォーターで、訳あって一人暮らししてるみたいな事は漠然と考えてましたけど。全然それらしく描けませんでした(笑) 例えば父親が余所の女に生ませた子供だから、本家に置いておけなくて、一軒家に住まわせてるとか。

編集 なるほど。ありそうですね。

法田 そういうのをドロドロした感じじゃなくて明るく描ければ良かったんですけど。ああ、カリンと言えばぶなちん。ぶなちんの名前の由来なんですが、カリンがピクニックに山へ出かけたら、ブナの木の下に捨てられてたからぶなちんなんです。

編集 次から次へと裏設定が…。

法田 こういう脳内設定は色々あるんですけど、話すのは恥ずかしいですね。それだったらちゃんと描けよってね。

編集 予定とまったく違う展開になったりしたことはありましたか。

法田 あまり先まで考えませんからね。流れに任せるというか。まあ、おおよそ和樹とみづきが最終的にくっつくというのは予定通りです。本当はそこに杉原をもっと絡ませたかったんですけど、それはさっきも言った通り描き切れなかったわけです。

編集 和樹とみづきの関係というのは実にゆっくりでした。

法田 そこは上手く描けたかなと思ってます。ああやってじっくり距離を詰めていく感じは予定通りですね。くっついたり離れたりを波瀾万丈に描くやり方もあるとは思うんですけど、イナカナではそうするつもりもなかったですから。

編集 二人が初めてやっちゃうのは3年生になってからです。今時の若者にしては奥ゆかしいというか何というか。

法田 まあ、周りから「あいつら出来てんだろ」みたいに思われても本人達はそうでないと思ってるわけです。

編集 苦労されたことなどはありますか。

法田 ページ数とかつじつま合わせとか、月刊連載だと前の話を忘れて話がおかしくなるのが怖いですよね。時間が空き過ぎて杉原の下の名前を忘れたりとか(笑) 大きなミスはなかったと思いますけど、例えば海の家の先輩。彼女は大学のOBであって農研のOBではないんですが、もしかしたら誤解されちゃう描き方だったかなとは反省しています。


続いていたら「イナカナらいふ」


二人が結ばれるまでずいぶん時間がかかりました

編集 イナカナは「こんすとらくたーず」の5巻を上回るご自身の最長連載となりました。一度も休みなしでここまで来たのは素晴らしいと思いますし、編集部としてはありがたかったです。

法田 それはまあもったいないというか、月刊だと季節が動いちゃうので。休んでいる間にその季節のエピソードが描けないのはもったいないですよね。

編集 季節感を無視するとか、1年を何回も繰り返すという手法もありますが。

法田 他人の作品はそうであっても気にならないんですけど、自分はそういうのよりも時間の流れに合わせる方がいいんです。いつまでも時間を繰り返していると結論も出ないんじゃないかと思っちゃうんです。

編集 読者からはもっと続けて欲しいというハガキもたくさん頂きました。

法田 ありがたいことです。

編集 続けることはできましたか?

法田 やろうと思えばやれたかもしれません。でもその場合、卒業してからの農業の話とか、和樹とみづきが婚約して結婚してとか…。

編集 出産とか。

法田 リアルタイムで描いていますから避けられないですよね。それにイナカナは一応、キャラクターの成長過程も描いていたので、やはり時間の流れはあった方がいいと思います。

編集 あのまま続けていたら…。

法田 「イナカナらいふ」になっちゃいますね(笑)

編集 最終回近くはすでに“かれっじ”ですらなくなってました。

法田 「うる星やつら」のように高校2年生を何度も繰り返すというのはもはや芸術ですらあると思います。ああいう作品を描くというのは、自分の力量では難しいですね。

編集 連載終了して全体的に満足度はいかがですか?

法田 それなりに高いです。まあ、あれを描きたかったこれを描きたかったは言えばキリがないですけど、時間は戻りませんからね。実際は和樹達にももっと色々な話があったわけですが、それを描くのは…さっきも言ったように時間が流れてしまってはもうその部分は今さら描けない訳です。読者の方達に想像してもらいましょう。

編集 どんな話にも終わりは来ると。

法田 やはり最終回のイメージを決めて描き始めないと描けないというのがあるんですよ。どこに向かうのか考えてからでないと。二人が結ばれて幸せに暮らしたんじゃないかな…という最終回のイメージでした。

編集 イメージ通りの終わりを迎えたと言っていいですね。

法田 たくさんの方から応援してもらえましたし、大変ありがたかったです。

編集 こちらこそありがとうございました。


  • ※1 夏のコミックマーケットのこと。
  • ※2 少年画報社発行の月刊誌「別冊ヤングキング キングダム」のこと。
  • ※3 リイド社発行の月刊誌「Comicボナンザ」のこと。
  • ※4 ぬまじりよしみ作。80年代前半に「花とゆめ」で連載されていたギャグマンガ。

まとめて読むのもオススメ!
アクションコミック「イナカナかれっじ」全6巻は双葉社のHPで購入できます。
まだお買い上げいただいてない方はぜひこの機会に!
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最終更新2005.09.12
 
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